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むし歯について知りましょう

歯の基本構造

歯の基本構造

エナメル質 歯冠を覆っている人体で最も硬い組織。一度破壊されると再生しない。
象牙質 エナメル質ほどではないが、かなりの硬度がある。象牙細管があり、温度の変化を神経に伝える。むし歯や歯周病で象牙質がむき出しになると、冷たいものや熱いものがしみるように痛む。
歯髄 歯科で「神経を抜く」というのはこの部分。神経と血管が通っている。歯髄をとると免疫力が下がり歯が弱くなる。
セメント質 歯根の表面を覆う結合組織で、コラーゲンを主体とした骨に近い組織
歯肉 歯ぐきの事。歯槽骨と歯を覆う粘膜でできている。健康な歯肉はピンク色。
歯槽骨 歯を支える顎の骨。歯周病が進行するとこの歯槽骨が吸収され、歯茎が下がってくる。さらに悪化すると歯が抜け落ちる。
歯根膜 約0.2mmの薄い膜で、歯槽骨とセメント質の間でクッションの役目をして、歯にかかる圧力を和らげる働きをする。

1.むし歯の原因

(1)むし歯はどうしてできる?
 むし歯は歯に付着したプラーク(歯垢)の中の細菌が飲食物の中の糖から酸を産生させ、その酸が歯質を溶かすことで発生します。細菌はエネルギーを得るために糖を分解しますが、その過程で酸が生じます。この酸が歯を溶かします。よって、細菌が存在しなければむし歯はできません。また糖の中でも砂糖は特に酸を産生させやすいので、砂糖を多く摂取する程、むし歯はできやすくなります。



(2)「脱灰」と「再石灰化」
 口の中のPH値(酸とアルカリの度合い)は通常はほぼ中性です。しかし、食事をとるたびに、むし歯菌が糖を分解して酸を出すために、口の中が酸性に傾き歯が溶け出します。これを「脱灰」といいます。
 しかし、唾液には酸性に傾いた口の中を中性に戻す「緩衝能」という力があります。唾液が十分に分泌されれば、緩衝能によって唾液に含まれるミネラルが歯の表面に取り込まれ、脱灰した部分が修復されます。これを「再石灰化」といいます。
 私たちの口の中は、常にこの脱灰と再石灰化を繰り返しています。1日に何度も間食をとっていると、再石灰化する時間が十分にとれず、結果としてむし歯になりやすくなります。

(3)ミュータンス菌とバイオフィルム
 むし歯の原因菌はいくつもありますが、むし歯を作る力が最も強いのが「ミュータンス菌」です。ミュータンス菌は砂糖と出会うと、グルコシルトランスフェラーゼという酵素を分泌して、粘着力の強いグルカンという物質を作り出します。このグルカンが歯の表面に張り付いて、そこにいろいろな細菌が集まってきます。この細菌の塊がプラーク(歯垢)です。
 プラークは次第に厚みを増し、その中で菌が繁殖して膜を作ります。これを「バイオフィルム」といいます。ミュータンス菌は砂糖をエサにして、バイオフィルムを厚くしてその中で増殖します。そして排泄物として酸を出し、歯を溶かしていきます。バイオフィルムに歯が覆われてしまうと、唾液も歯に触れることができず、緩衝能も働きません。
 さらに、ミュータンス菌はいったんバイオフィルムを作ってしまうと、デキストラーゼという酵素を分泌して、自分たちが作ったグルカンそのものをエサにして生き続け酸を出し続けます。自分が作り出したものをエサにすることができるので、砂糖がそれ以上入ってこなくても、むし歯をどんどん進行させてしまうのです。

ミュータンス菌とバイオフィルムミュータンス菌とバイオフィルムミュータンス菌とバイオフィルム

2.むし歯の進行とその症状

(1)むし歯はどのように進行するのか?
歯の表面は身体の中で一番硬いエナメル質で覆われています。ここは耐酸性も高く、むし歯もなかなか進行しません。よって、エナメル質に穴が開くまでには時間がかかります。エナメル質の下は象牙質で、ここまでむし歯が到達すると、急に進行は速くなります。表面からは小さなむし歯と思われても、内部で拡がって大きくなっていることが稀ではありません。
 象牙質内では、顕微鏡でなければ見えないくらい細い管が神経のある歯髄まで達しているので、ここまでむし歯が到達すると甘い物がしみたり、食物がむし歯の穴に押し込まれて痛みが出ます。これでも放置しておくと、いよいよ歯髄にまでむし歯が到達して激しい痛みに襲われることになります。
 エナメル質に穴が開いたら、むし歯は進行する一方で自然治癒はありえません。早めに治療する必要があります。ただし、単に黒く着色しているだけであれば、治療せずに経過観察した方が良い場合もあります。気になる箇所があるなら、早めに歯科を受診して調べてもらいましょう。

(2)進行度によるむし歯の分類
 むし歯は進行度合いによってC1、C2、C3、C4に分類されています。むし歯になる前段階のCOという分類もあります。これら分類の詳細について説明します。
①CO
 COのCはCavies(むし歯)、OはObservation(観察)という言葉の頭文字をとったものです。つまり「まだむし歯ではないが、むし歯になりそうなので要観察の歯」ということです。
 COは歯の表面が「脱灰」のために白濁するなどの変化は起きていますが、まだ穴は開いていない状態です。フッ素入りの歯磨き剤でしっかり磨き続ければ「脱灰」の逆の反応である「再石灰化」が起きて歯が元の状態に戻ることがあります。
 このように歯の質が再生する可能性があることから、COは治療をせず経過を「観察」するにとどめます。

②C1
 C1はエナメル質にだけむし歯が存在する状態です。エナメル質は酸に溶けにくいのでむし歯はゆっくりと進行します。C1は無症状でしみたり痛んだりしませんが、削って詰める必要があります。削る部分は最小限で済むので、治療は比較的簡単です。

C1

③C2
 むし歯がエナメル質からその先の象牙質に達したのがC2です。
 むし歯はエナメル質の入り口部分が小さくても、象牙質に達すると急速に拡大します。象牙質内でむし歯が拡がるとエナメル質が黒く透けて見えるようになります。エナメル質の部分を取り除くと、大抵入口の何倍も大きなむし歯が中で拡がっています。

C2

 C2まで進行したむし歯は、深部に進むにしたがって、冷たい物や甘い物が飲食時にしみるなどの症状が現れます。この症状が出た段階で、むし歯は歯髄近くまで進んでいると考えられますが、できるだけ歯髄は残しむし歯の部分だけを除去して、詰め物や金属冠で修復します。
④C3
 C2のむし歯がさらに進行して歯髄に達した状態がC3です。歯髄には血管や神経が通っています。この歯髄が細菌感染を起こして炎症状態になると何もしなくても痛みを感じるようになります。この段階になると麻酔をして歯を大きく削り、歯髄を取除く処置が必要となります。

C3

⑤C4
 C3の状態を放置すると、歯髄は次第に細菌に侵され死んでしまいます。それと共に歯冠部は崩壊し、歯根しか残らない状態となり、これをC4と呼びます。
 C4は歯髄が死んでいるので、もはや痛みはありません。しかし歯髄に拡がった細菌は根管を通り根の先まで進んで、歯根の先端に病巣を作ります。
 病巣での炎症がゆっくり慢性的に進行すれば、痛みなどの症状はほとんどありません。しかし急性化すると激しい痛みを伴い、歯肉から膿が出て顎や頬が腫れあがってしまいます。

C4

 C4の状態では歯冠のむし歯だけでなく、根管内にも細菌が繁殖しているため治療としてはむし歯を完全に除去し、根管治療を行います。むし歯の進行が著しく、根尖病巣が大きければ、抜歯しなければなりません。

(3)「二次カリエス」と「根面う蝕」
 過去に治療した詰め物や被せ物の隙間からむし歯菌が入り込み、治療した歯が再びむし歯になるケースがあります。これを「二次カリエス」といいます。見つけにくいむし歯ですし、神経を抜いた歯であれば痛みもないので、気付いた時にはかなり進行しているケースが多くなります。詰め物や被せ物は一生ものではなく、経年劣化により歯との間に隙間が生じるので、油断をしてはいけません。
 もうひとつ、高齢者に多いむし歯が「根面う蝕」です。加齢や歯周病によって歯肉が下がり、露出した歯根の部分はむし歯ができやすくなります。歯根の表面のセメント質や象牙質は軟らかいので溶けやすくむし歯の進行が速いので要注意です。

「二次カリエス」と「根面う蝕」

3.むし歯の治療

(1)腐った歯質を取り除く───軟化象牙質除去
 むし歯治療は基本的に、細菌に侵されて軟らかくなった歯質(軟化象牙質)を完全に除去することから始まります。
 患者さんの中には「なるべく歯を削らないでほしい」とおっしゃる方もいますが、細菌に侵されたむし歯を残すことは、がん細胞に侵された部分を残したまま癌の手術を終わりにすることと同じですから、あってはならないことです。

(2)充填による治療
 むし歯が小さくて取り除いた部分の穴が小さい場合、アマルガム(水銀合金)やレジン(人工樹脂)などの歯科材料を詰めます。これを「充填」といいます。
①アマルガム充填
 アマルガムとは水銀と銀、スズなどを粉末にして練り合わせた合金です。安価で歯に直接詰めることができるため手間がかからないという利点があります。
 しかし、時間の経過による劣化が起きやすく、次第に歯との間に隙間ができて、むし歯再発の原因になってしまいます。また、アレルギー反応を起こしやすいという欠点もあるため、最近ではほとんど使われなくなりました。
②コンポジットレジン(CR)充填
 レジンとは、プラスチックのような人工樹脂です。これにガラスの粉を混ぜて強度を上げ、歯科用の充填物として使用しています。これをコンポジットレジン(CR)といいます。
 CRは初めは粘土のような軟らかい状態にありますが、紫外線を当てると硬化するようにできており、使いやすい材料です。
 CRは歯と同じ色調なので、目立ちにくく治療も1回で終了するため、便利な材料といえます。

CR充填

(3)インレーによる治療
 むし歯による欠損が大きく複雑で、口の中で直接行う充填での治療が困難な場合、歯型をとって模型を作り、その模型上で作った修復物を歯に合着するという治療を行います。欠損が比較的小さく、健全な歯が多く残っている場合、歯を部分的に覆う修復物を被せます。これがインレーです。
 インレーによる治療の流れとしては、まずむし歯を完全に除去します。その上で残った歯の強度、修復材料の強度、さらにインレーが脱落しないかどうかなど、諸々のことを考慮して歯を削ります。歯型を採って模型を作製し、後日その模型で作ったインレーをセメントで歯に装着します。
 インレーの材料には、金属やポーセレン、ハイブリッドセラミックなどがあります。

(4)クラウンによる治療
 むし歯が大きく、部分的な修復では治療困難な場合、歯の全体を覆う形で修復を行います。むし歯になった歯に「冠」のように修復物をすっぽり被せてしまうことから「クラウン」と呼ばれています。
 クラウンによる治療の流れは、インレーとほぼ同じです。むし歯を除去し、適切な形に削ったあと、模型を作るための型取りをします。後日石膏模型上で作られたクラウンを口の中で合わせ、セメントで合着します。
 クラウンの材料には金属、ポーセレンなどがあり、複数の材料の良いところを活かすためにコンビネーションで作られたメタルボンド、硬質レジン前装冠と呼ばれるものがあります。

(5)良い修復物・悪い修復物の見分け方
①マージンは合っていますか?

良い修復物・悪い修復物の見分け方

 歯と補填物との継ぎ目をマージンと呼びますが、この部分に隙間や段差があったりすると、そこにプラークが溜まり、むし歯が発生することがあります。このようなむし歯を二次カリエスといいます。
②隣の歯とのコンタクトは良いですか?
 補填物と隣の歯との接触部のことをコンタクトといいます。このコンタクトが緩いと、食べ物が挟まりやすくなります。歯の間に食べカスが挟まるとそれだけで気になって不快ですし、むし歯や歯周病の原因となります。
③噛み合せは適切ですか?
 新しい補填物を装着する場合は、顎全体の咬合(噛み合せ)が調和するように精密な咬合調整が必要です。新たに入れた補填物が噛み合う歯と強くあたっていると、咬んだ時に痛くなり、逆にあたっていないと食べ物がよく咬み切れません。それ以外にも、咬合調整に不備があると、歯周病や歯根破折、顎関節症の原因となります。

4.むし歯の予防
(1)むし歯のリスクをなくそう
①飲食の回数が多いのは良くない
 食物の中に含まれる糖が口の中に入ると、ミュータンス菌は糖を取り込んで、酸を作ります。そして菌からミネラル(リンやカルシウム)が溶け出します。これが「脱灰」です。
 しかし、唾液が十分に分泌されると、酸を洗い流し中和してくれます。しかも唾液に含まれるカルシウム、リン酸、フッ素イオンが「再石灰化」を助けます。
 ところが、飲食の回数が多いと頻繁に入ってくる糖のおかげで、脱灰と再石灰化のバランスが大きく脱灰に傾きます。三度の食事以外に何度も間食をとったり、糖の入った飲み物をチビチビと飲むのはできるだけ控えましょう。
②甘いものが大好きはやっぱりダメ
 むし歯を作る二大要因が砂糖とミュータンス菌です。むし歯を防ぐにはこの2つが出会わないようにしなければなりません。砂糖の摂取量をできるだけ減らしましょう。糖分は色々な食品に含まれています。知らず知らずのうちに摂取しているものです。ですから、明らかに砂糖が含まれているものはなるべく控えるようにしましょう。
 缶コーヒーや清涼飲料水には想像以上に多くの糖分が含まれています。スポーツドリンクにも糖分が含まれています。水分を取る時にはなるべく砂糖の入っていないお茶などを飲むようにしましょう。

間食、甘いものはだめ!

(2)フッ素
 歯の質を強くしてむし歯になりにくくする物質が「フッ素」です。
 フッ素塗布は歯のエナメル質の結晶性を高め、酸に強い歯を作り、むし歯になりかかっている歯の再石灰化を促進します。
 フッ素でむし歯予防ができる最大の理由は、むし歯菌が酸を作る作用を抑制することにあります。フッ素を塗布した場合とそうでない場合とでは、その効果に3割くらいの差があるといわれています。
 むし歯予防のためには、フッ素を多く含有した海産物を食べるようにすると効果的です。歯が作られ始める胎児の時期から永久歯列の完成する12歳頃まで、フッ素をはじめ歯の原料を多く含む小魚を骨ごと食べていれば、歯の内部まで耐酸性の高い歯になります。
 うがいができるようになった子供にはフッ素入りのうがい薬がお勧めです。微量のフッ素が体内に吸収されるので、乳歯の下で形成されている永久歯も丈夫になります。幼児期ほどではありませんが、成人してからもフッ素のうがい薬やフッ素入りの歯磨き剤を使うと効果があります。特に歯肉が下がって歯の根の表面が露出してしまった人には、使用をお勧めします。根の表面はエナメル質で覆われていないので、耐酸性が弱いのです。ちなみに現在販売されている歯磨き粉のほとんどはフッ素を含有しています。

フッ素含有うがい薬や歯磨き粉

(3)キシリトール
 むし歯になりにくくなる甘味料にキシリトールがあります。キシリトールは白樺や樫の木などから作られる甘味料で、構造が砂糖に似ているので、むし歯の原因菌であるミュータンス菌は砂糖と間違えてこれを取り込んで酸を作ろうとします。しかしミュータンス菌はキシリトールを分解できません。その結果、消化不良の食物を食べた後のようにミュータンス菌は疲弊して減少します。ミュータンス菌が減少するのでむし歯も減少します。ただし、このむし歯予防効果はフッ素ほどではありません。またキシリトールは高価なのでキシリトール入りと表示してあっても、100%含有でないものの方が多いので注意が必要です。

(4)治療した歯の注意点
 患者さんの中には、金属で詰めたり被せたりした歯の方が丈夫だと考える人もいるようですが、これは間違いです。むし歯になってしまった歯は人工物で復元はできますが、人工物は削られた歯と接着剤を介して固定されています。この修復物は三度の食事や歯ぎしりの重圧に耐え、細菌が周囲に生息する状況でどのくらいサバイバルできるのでしょうか?

治療した歯の注意点

 むし歯の治療は実のところ、成人で初めてむし歯になった歯より以前に何らかの治療が施された歯の再治療の方が圧倒的に多いのです。統計によると歯の修復物の平均使用年数は6.9年で、さらに外れた歯を再治療した場合、その修復物の平均使用年数は5.4年と短くなっています。つまり、治療を受けた歯は自然のままの歯より脆いのです。
 修復物を製作する時はなるべく理にかなった形に歯を削り、精密な型をとり、歯にぴったり接着するように神経を使いますが、どう頑張っても歯と修復物の間には細菌のサイズからいえばかなり大きな隙間ができてしまいます。したがって、その隙間にプラークが溜まらないように、しっかり歯磨きする必要があります。
 また、接着剤が加圧によって破壊されないように、乱暴に咬むのは控えた方が良いでしょう。詰め物が取れた患者さんに原因を聞くと、飴を咬んだ時が多いようです。
 詰め物や冠を歯に装着している方は、むし歯を作ってしまった生活態度を反省し、甘い物を控え、歯磨きをきちんとするようにしましょう。

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